獣医さんの言葉に隠された誤解と、毛玉猫レスキューの現場から
「獣医さんに『洗う必要はない』と言われたんです。でも、こんなに毛玉だらけになってしまって…」
当店に来られる毛玉猫ちゃんの飼い主さんから、本当によく聞く言葉です。私が子どもの頃は、長毛の猫は珍しかった。
野良猫といえば短毛で、飼い方も放し飼い、ご飯は猫まんまが当たり前。
短毛猫なら、多少手入れを怠っても毛玉になることは稀でした。
しかし、今は違います。街には長毛の野良猫もいる時代。
長毛猫は、適切なケアをしなければ毛玉だらけになってしまうのです。
原因は、換毛期に抜けた毛が、脂っぽくなった体に絡みつくこと。
そのまま放置すると、健康な毛まで巻き込んで、どんどん大きな毛玉になってしまいます。
猫にとって「洗う」は、健康維持の第一歩
定期的なシャンプーで余分な脂を落とし、抜け毛をしっかり取り除くこと。
これが、毛玉を防ぎ、猫が快適に暮らすための秘訣です。
毛玉は、猫の凶暴化の大きな原因の一つです。毛玉が皮膚を引っ張り、痛みを生じさせる。
酷い場合には、皮膚が剥がれてしまうこともあります。触られると痛いから、威嚇する。
動くと毛玉が引っ張られるから、じっとしている。
そんな状態では、食欲もわかず、必要な栄養も摂れません。痛くて触らせてくれないから、飼い主さんを威嚇してしまう。
脂で毛穴が詰まり、正常な換毛ができなくなる。そして、季節外れの毛量で過ごさなければならない…。まさに悪循環です。
長毛・短毛に関わらず、猫は洗うべき生き物です。
シャンプーは、皮膚を清潔に保ち、正しい換毛を促します。適切な換毛が行われていれば、
夏場でも体温を適切に保つことができ、必ずしもサマーカットが必要というわけではありません。
カットよりもシャンプーを重視する理由
当店では、猫の被毛をむやみにカットすることはお勧めしていません。
なぜなら、カットされた毛の断面は鋭利になりやすく、毛絡みを引き起こし、櫛通りを悪くしてしまうからです。
できる限りカットは避け、シャンプーで猫本来の美しい被毛を保ち、快適に過ごせるようにサポートしたいと考えています。
もちろん、カットが全く不要というわけではありません。
毛玉が酷く、どうしても取り除けない場合や、首回りの毛が長すぎて吐き戻しが多い場合、
お手入れが困難なほどの爆毛の場合など、状況に応じてカットやレーキングを検討します。
猫のカットが流行り始めたのは、ごく最近のこと。
酷い毛玉を取り除いた部分を隠すために、カットで整えるのが始まりだったと記憶しています。
どうにもならない毛玉猫ちゃんを丸刈りにした後、少しでも可愛く見せるために、ライオンカットやゴジラカットが生まれたのです。
しかし、デザインカットは猫に負担をかけるだけでなく、飼い主さんのお手入れも難しくしてしまうことがあります。
可愛くした結果、毛玉ができやすくなることもあるのです。
当店が目指すのは、猫のQOL(生活の質)向上
当店では、猫のQOLを向上させ、健康寿命を延ばすためのトリミングを提供しています。
その結果、飼い主さんの日々のケアの負担軽減にも繋がると信じています。
猫も飼い主さんも、幸せな時間を一日でも長く過ごしてほしい。そのために、私たちはトリミングをしています。
無麻酔トリミングのリスクと、サロン選びの重要性
毛玉猫ちゃんは、できるだけ早く毛玉を取り除いてあげてください。
無麻酔・無鎮静トリミングは魅力的な言葉ですが、すべての猫に適しているわけではありません。
トリミングに恐怖を感じ、精神的なダメージを受けてしまう猫には、鎮静下でのトリミングも検討すべきです。
トリミングは、猫にもトリマーにも集中力が必要な作業です。
初めての猫の場合、どこまでがストレスで、どこからが負担なのか判断が難しいこともあります。
だからこそ、自分たちのスタイルに合ったトリミングサロンを見つけることが大切です。
サロンが何を大切にしているのか、自分の考えと近いかどうか、しっかり見極めましょう。
飼い主さんが猫について知識不足だと感じるなら、知りたいことを教えてくれるサロンを選ぶのも良いでしょう。
たくさんのキャットサロンがあります。猫を中心に、飼い主さんの考えに合ったお店を選んでくださいね。